商品売買の仕訳

By 林耕平
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この記事では、簿記初級レベルの商品売買に関する仕訳の記帳方法を解説します。Eコマースやスーパーマケットなど、商品を仕入れて販売する小売業や、メーカーから商品を仕入れてそういった会社に商品を提供する卸売業などが該当します。
いずれの業態も、自身で商品を製造しているのではなく、仕入先から商品を仕入れ、利益を乗せて販売しています。

現金取引か掛け取引か、商品の送料はどちらが負担するかなどによって仕訳方法に若干の違いはありますが、仕入の際は仕入という費用勘定科目を使い、販売の際は売上勘定科目を使うという基本さえ押さえていれば理解するのはそれほど難しくありません。

現金による商品売買

現金で商品を仕入れた時は、現金が減って仕入費用が増加するので以下のような仕訳になります。
例:10,000円の現金で商品を仕入れた。

勘定科目 借方 貸方
仕入 10,000
現金 10,000

仕入れた商品を現金で売り上げた場合は、現金も売上も増えるので以下のような仕訳になります。

例:仕入れた商品を現金12,000円で売り上げた。

勘定科目 借方 貸方
現金 12,000
売上 12,000

掛けによる商品売買

現金ではなく掛け払いによる仕入れの場合、借方は現金の時と同様に仕入勘定を使いますが、借方は現金の減少ではなく負債の増加として買掛金に仕訳されます。

例:月末払いの約束で、10,000円分の商品を仕入れた。

勘定科目 借方 貸方
仕入 10,000
買掛金 10,000

また、商品を掛け払いで販売した場合、貸方は現金取引の時と同様に売上勘定を使いますが、借方は現金ではなく売掛金の増加となります。

例:仕入れた商品を月末払いの契約で12,000円で売り上げた。

勘定科目 借方 貸方
売掛金 12,000
売上 12,000

クレジット払いによる商品売買

クレジットカードにて商品を販売した場合、同じ掛けによる販売でも仕訳に使う勘定科目は売掛金ではなくクレジット売掛金となります。 これは、通常の掛け販売は顧客に対する信用取引であるのに対し、クレジット払いは信販会社に対する信用取引となり手数料が引かれて入金されるため、両者を区別する必要があるからです。
*なお、クレジット払いにて仕入を行っても手数料は発生しないため、クレジット買掛金という勘定科目は存在せず、通常の買掛金勘定科目を使います。

例:クレジット払いにて商品12,000円を売り上げ、信販会社の手数料は1,000円だった。

勘定科目 借方 貸方
クレジット売掛金 11,000
支払手数料 1,000
売上 12,000

仕入返品

品違いなどで、仕入先に商品を返品することを仕入れ返品といいます。
仕訳は仕入れの時の正反対となり、仕入費用が減り、買掛金も減ります。

掛けで仕入れた商品のうち5,000円分を返品した。

勘定科目 借方 貸方
仕入 5,000
買掛金 5,000

売上返品

逆に、売り上げた商品が品違いで返品される時は売上返品となります。
売上時とは逆の仕訳となり、売上、売掛金ともに減少します。
掛けで売上げた商品のうち、5,000円が品違いで返品となった。

勘定科目 借方 貸方
売上 5,000
売掛金 5,000

引取運賃

商品を仕入れる際に発送費をこちらが負担する場合は、引取運賃は仕入額に含めて仕訳します。
例えば、10,000円の商品を仕入れて、着払い料金500円を現金で支払った場合は以下のような仕訳になります。

勘定科目 借方 貸方
仕入 10,500
買掛金 10,000
現金 500

発送費

商品を販売した際、発送費をこちらが負担した場合は、発送費という勘定科目を使います。仕入れの時とは違い、発送費を引いた額を売上に記載するわけではありませんので、注意が必要です。

例えば、10,000円の商品を販売し、発送費500円を現金で支払った場合は以下のような仕訳になります。

勘定科目 借方 貸方
売上 10,000
発送費 500
売掛金 10,000
現金 500

前払金

仕入れ代金の一部を先払いした場合は、発生主義に基づきまだ費用とは認識されないため、前払金という資産勘定を使います。
10,000円の商品仕入れの際、5,000円分を先払いした。

勘定科目 借方 貸方
前払金 5,000
現金 5,000

実際に仕入れた商品が到着した際は、前払金を消し込み、残りの債務を買掛金として計上します。

勘定科目 借方 貸方
仕入 10,000
前払金 5,000
買掛金 5,000

前受金

逆に、まだ発送していない商品の代金を先払いで受け取った場合はまだ売上が立っていませんが、商品を将来提供する義務の認識として前受金という負債勘定を使います。 10,000円の商品の販売において、5,000円分を先払いで受け取った。

勘定科目 借方 貸方
現金 5,000
前受金 5,000

その後、実際に商品を発送して売上をたてる際には、前受金を消し込み、残額を売掛金として計上します。

勘定科目 借方 貸方
売掛金 5,000
前受金 5,000
売上 10,000

商品売買の消費税

通常、商品の売買は消費税の課税対象となっており、受け取った消費税から支払った消費税を引き、差額を国に納付します。
税抜方式で会計処理を行っている場合、商品を仕入れた時に仕入先に支払った消費税は仮払消費税という資産勘定を使い、仕入れ代金とは分けて記帳します。
なぜ資産勘定かと言えば、仮払消費税は後述の仮受消費税から納付額を控除出来る権利であり、また支払った消費税が受け取った消費税より多い場合は差額について還付を受けることが出来る権利であるためです。
例えば、税抜5,000円の商品を仕入れ、消費税が10%の場合、以下のような仕訳になります。

勘定科目 借方 貸方
仕入 5,000
仮払消費税 500
買掛金 5,500

一方、商品を販売した場合、販売先から受け取った消費税は仮受消費税という負債勘定に記帳します。なぜ負債かと言えば、受け取った消費税は国に納付する義務があるためです。
例えば、税抜10,000円の商品を10%の消費税で販売した場合の仕訳は以下の通りです。

勘定科目 借方 貸方
売掛金 11,000
仮受消費税 1,000
売上 10,000

なお、Cagameeのような会計ソフトの多くは消費税自動計算機能がついていますので、税抜会計方式を採用していても、税込み金額を入力すれば商品の税抜価格と消費税分に自動的に分けて仕訳されます。

Cagameeでの消費税を含む現金仕入仕訳の例:
Cagameeでの消費税を含んだ仕入仕訳の例
Cagameeでの消費税を含む売上仕訳の例:
Cagameeでの消費税を含んだ売上仕訳の例

この記事では商品売買に関する取引の仕訳方法を解説しましたが、いかがでしたでしょうか。ご自身の会社に当てはまる部分があるようでしたら、ぜひ参考にしてみてください。