給与手当の仕訳方法

By 林耕平
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給与支払いの仕訳は給与のみならず税金や社会保険料の控除等が発生するため、一つの仕訳に関わってくる勘定科目も数が多くなり、苦手意識を持っていらっしゃる方も多いと思います。私も会社を設立して初めて自分に役員報酬を支払ったときは勝手がわからず、インターネットで色々なサイトを調べ散々苦労して記帳を行いました。

ただ、一旦仕組みが分かって慣れてしまえばそれほど難しくもありませんので、以下の例を使って給与明細に記載の金額を基にどのような仕訳になるか、Cagameeを使って見ていきたいと思います。

支給

基本給 500,000
通勤手当 10,000

控除

健康保険料 24,675
介護保険料 4,475
厚生年金保険料 45,750
雇用保険料 1,500
住民税 20,000
所得税 18,470
振込支給額 395,130
  • 給与の締め日は当月20日、支給日は当月25日とします。
  • 月額報酬は500,000円+10,000円=510,000円です。月額報酬が485,000以上515,000未満の標準月額報酬は500,000円となります。
  • 健康保険料、厚生年金保険料は協会けんぽの東京都の保険率を使用しています。
  • 健康保険料は上記の月額報酬で全額で49,350円ですが、会社と個人で折半するので個人負担額は24,675になります。
  • 厚生年金保険料は全額で91,500円、会社と個人で折半するので個人負担額は45,750円になります。
  • 介護保険は全額で8,950円ですが会社と個人で折半するので個人負担額は4,475円になります。
  • 雇用保険の従業員負担は給与額の3/1000で1,500円となります。
  • 所得税の計算
    源泉所得税の課税対象額:給与 - (健康保険料+介護保険料+厚生年金保険料+雇用保険料) = 500,000 - (24,675 + 4,475 + 45,750 + 1,500) = 423,600
    国税庁の源泉徴収税額表で確認すると、社会保険料控除後の給与額が422,000から425,000の間で扶養がない場合の所得税は18,470円となることがわかります。
    なお、通勤費は上限までは非課税で、住民税は控除には含まれません。

給与締め日(この例では毎月20日)の仕訳

この時点ではまだ実際に従業員への支払いは行われていませんが、発生主義に基づき会社としての費用と債務を認識します。


Cagameeでの給与締め日の仕訳

まず、仕訳前の勘定科目の設定ですが、預り金の下の階層に補助科目として社会保険料、雇用保険料、住民税、源泉所得税を設定しています。
これはそれぞれの項目の納付先が異なるため、納付額の確認や納付後の残高の消し込みを可能にするためです。ちなみに社会保険料は日本年金機構、雇用保険料は労働局、住民税は役員・従業員の居住市区町村、源泉所得税は税務署がそれぞれ納付先になります。

また、給与から控除するのは前月分の社会保険料ですので、この例では8月分の給与から7月分の社会保険料を控除しています。

全体として、給与明細の支給項目は借方(左側)、控除項目と振込額は貸方(右側)に仕訳されると覚えると楽かもしれません。
これは、給与明細の支給項目は会社から見ると費用勘定科目となり、簿記では費用の増額は借方になるためです。また、控除科目は会社の視点からは給与から控除して一時預かったものという認識で、最終的な納付先への負債となり、負債勘定科目の額の増加は簿記では貸方となるためです。
このように、ただ暗記するよりもなぜそうなるかもあわせて理解しておくと、仕訳の際に迷うことはなくなるかと思います。

通勤手当は個人の所得税の観点からは非課税ですので、所得税の計算には含めませんが、支払い法人が消費税の課税業者だった場合は消費税の控除が発生します。上記の例では課税業者を想定し、10%の課税仕入れ(909円)が発生しています。

上記は従業員に対する仕訳例ですが、役員に対する仕訳の場合は費用項目を役員報酬に変更し、雇用保険料を除くだけです。

給与支払い日の仕訳(この例では毎月25日)


Cagameeでの給与支払い仕訳

このように未払い給与を借方、振込を行った銀行口座を貸方にして仕訳をし、締め日で計上した未払い給与残高を消し込みます。

源泉所得税の納付の仕訳(翌月10日)

なお、給与の締日に預かった源泉所得税を納付した際の仕訳は以下のようになります。税務署から納期の特例の承認を受けていない限り、納付期限は翌月の10日です。
給与支払いが10人未満の会社は納期の特例の承認を受けることにより半年に一回の納付で済むようになるため、その場合は毎月の給与発生仕訳の際に源泉所得税の預り金を積み上げ、6ヶ月に一回の納付の際に残高の消し込みをすることになります。

Cagameeでの源泉所得税の納付仕訳

住民税の納付の仕訳(翌月10日)

給与の締日に預かった住民税を納付した際の仕訳は以下のようになります。各市区町村から納期の特例の承認を受けていない限り、納付期限は翌月の10日です。
住民税も源泉所得税と同様、給与支払いが10人未満の会社は納期の特例の承認を受けることにより半年に一回の納付で済むようになるため、毎月の給与発生仕訳の際に住民税の預り金を積み上げ、6ヶ月に一回の納付の際に残高の消し込みをすることになります。

Cagameeでの住民税の納付仕訳

社会保険料の納付(当月末)

社会保険料の納付は、給与発生の際に控除した預り金の他に、会社負担分を合わせて納付しなければなりません。仕訳としては以下のようになります。
Cagameeでの社会保険料の納付仕訳

社会保険料の発生(前月末)

ちなみに、会社負担分の社会保険料未払費用は以下の通り7月末に計上してあります。 従業員から預かり8月に納付する社会保険料は7月分ですので、合わせて納付する会社負担分も7月分となり、7月の経費として計上します。
実務としては、従業員分と会社分を合わせた7月分の納付書が8月に届きますので、従業員と会社それぞれの負担額を計算して計上することになります。

Cagameeでの社会保険料の発生仕訳

会社負担額は、健康保険料(介護保険含む)の半額29,150円+ 厚生年金保険料の半額 45,750円 + 子ども・子育て拠出金(標準月額報酬の0.36%)の全額 1,836円を足した76,736円となります。

給与発生から支払いに関わる一連の仕訳を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
慣れれば簡単ですので、ぜひご自身の会社の給与のタイミングに合わせて仕訳を行ってみてください。