e-Taxを使った法人確定申告 - 法人税・法人地方税
法人の電子確定申告は税理士に代行をお願いすることももちろん出来ますが、自分で国税庁のe-Taxソフトを使って申告をすることは実はそれほど難しくありません。特に、これまでご自身で確定申告をされた経験がある方であれば、e-Taxの操作を覚えてしまえばインターネット経由で送るか書面で提出するかだけの違いであり、作成する書類の種類自体は変わりませんので、すばやく電子申告に移行出来るはずです。
電子申告に移行することは、少なくとも以下の3つのメリットがあります。
- リモートワークの実現:自宅にいながら申告から納税まで終えることが可能。
- コロナ対策:申告・納付のために公共交通機関を使って税務署や金融機関に行き、コロナに感染してしまったり拡散してしまうリスクを無くすことが出来る。
- DX化、ペーパーレス化:申告情報が元々デジタルでPCに保存されているので、提出する書類をコピーしたりスキャンしたりして保存する手間がありません
事前準備
- e-Taxの公式サイトから、e-Taxの利用者識別番号を取得します。即日発行が可能です。
- 電子証明書の取得。マイナンバーカードを使うことも出来ますが、商業登記電子証明を取得して使うことも可能です。こちらも即日発行が可能です。
- e-Taxソフトのダウンロード
e-Taxソフトにはデスクトップ版(ダウンロード版)、ウェブ版などいくつか種類がありますが、法人の確定申告に対応しているのは現時点でダウンロード版だけです。ダウンロード版はWindowsのみの対応なので、普段Macを使っている人は仮想化環境でWindowsを立ち上げるか、別途WindowsをインストールしたPCが必要です。
申告書作成
e-Taxを起動すると画面表示前に税目を追加インストールするかを尋ねられますので、初回は「追加インストール」を選択し、「申告」-> 「法人税・地方法人税」の中から、申告したい事業年度を選んでインストールします。
インストールが終わりe-Taxソフトを開いたら、利用者ファイルを選択します。利用者ファイルとは、ユーザーアカウントのようなもので、1つの法人の申告しかしない場合は1つのみ作成で大丈夫です。もし初めてe-Taxを利用する場合は、事前準備で取得した利用者識別番号と法人名を入力して作成します。過去にe-Taxを使ったことがある場合はその時に作成した利用者ファイルを選択します。
上部メニューの「作成」-> 「申告・申請等」->「新規作成」を選択します。
手続きの種類は「申告」、税目は「法人税・地方法人税」、年分は申告する事業年度を選択します。
もしここで希望の項目が表示されない場合は税目のインストールがされていない可能性がありますので、e-Taxを再起動し、最初に表示されるポップアップ画面で必要な税目をインストールします。
帳票の選択
「内国法人の確定申告(青色)」を選択し、必要な帳票をすべて選択します。必要かどうか現時点でわからない場合は後で追加や削除が出来ますので、あまり神経質にならずとりあえず確実に必要な帳票のみ選択して次に進みます。必要な帳票は法人ごとに違ってきます。また、同じ法人でも事業年度によって若干違ってくるので、自社の状況に合わせて調整します。
今回の例では、よく使われる以下の帳票を選択します。
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別表
- 別表1各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分
- 別表1(次葉)各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(次葉)
- 別表2同族会社等の判定に関する明細書
- 別表4所得の金額の計算に関する明細書
- 別表5(1)利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書
- 別表5(2)租税公課の納付状況等に関する明細書
- 別表6(1)所得税額の控除に関する明細書
- 別表7(1) 欠損金又は災害損失金の損金算入等に関する明細書
- 別表15交際費等の損金算入に関する明細書
- 適用額明細書
- 財務諸表(XBRL2.1 )
- 法人事業概況説明書
- 勘定科目内訳明細書
- 預貯金等の内訳書
- 売掛金(未収入金)の内訳書
- 仮払金(前渡金)の内訳書、貸付金及び受取利息の内訳書
- 買掛金(未払金・未払費用)の内訳書
- 仮受金(前受金・預り金)の内訳書、源泉所得税預り金の内訳
- 売上高等の事業所別内訳書 (複数の事業所がなく、本社しかない法人の場合でも提出が必要です。)
- 役員報酬手当等及び人件費の内訳書
- 地代家賃等の内訳書、工業所有権等の使用料の内訳書
- 雑益、雑損失等の内訳書
もし必要な帳票が一覧にない場合は、その帳票はまだe-Taxで未対応の可能性があります。
そのような場合は、国税庁のサイトからその帳票だけダウンロード・印刷して記入したものを別途書面で提出するか、スキャンしてe-Taxで送信することが可能です。
e-Taxのサイトで「リリース前別表検索ツール」がエクセル形式で提供されていますので、ダウンロードして送信する前に確認しましょう。
今回のケースでは別表11(1の2)がリリース前でPDF提出可能と検索ツールで表示されましたので、スキャンして送付します。
自分が覚えやすい任意の名前(~年度確定申告など)を付けて一旦保存します。
帳票に自動入力する基本情報項目を入力します。この基本情報も後から編集することが可能ですので、わかる範囲で入力していき保存します。
すると、選択した帳票が一覧で表示されますので、編集したい帳票を選んで「帳票編集」ボタンをクリックし、項目を入力していきます。
基本は入力出来るものから順番に記入していきます。
別表1,別表4、別表5など申告の中心となる帳票は一回の編集ですべての項目を埋めることは難しいかと思いますが、すべての帳票で途中保存が可能なので、別の帳票を作成してから戻ってきて完成させることが出来ます。
帳票には金額の合計欄があるものが多いですが、一部を除いて自動計算はしてくれないので、エクセルなどで合計を確認して検算しながら入力していった方が良いでしょう。ここら辺の動作は今後のバージョンアップで改善を期待しましょう。
なお、帳票の中で財務諸表だけは、帳票編集画面からさらに個別の帳票を作成する必要があります。
サービス業なら貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つを作成し、製造業ならば上記4つに製造原価報告書を追加します。Cagameeなどの会計ソフトで決算日の財務諸表を表示し、数字を転記します。
電子署名の付与
すべての帳票が作成完了の状態になったら、電子署名を付与します。
左メニューの「署名可能一覧へ」から「電子署名」を選ぶと、作成完了した申告の一覧が表示されます。
ここで先ほど作成した申告を選択すると、署名する前に帳票にエラーがないかをシステムがチェックしてくれます。
もしエラーがあるようでしたら該当の帳票を修正し、再度トライします。
エラーがない場合は、「ICカードを利用」のマイナンバーを使った方法と、「他メディアを利用」の2種類の方法が選べます。
今回の例ではカードリーダーが必要なマイナンバーではなく、ファイルのみで署名可能な商業登記電子証明書で署名しますので、「他メディアを利用」を選択します。
PCに保存されている商業登記電子証明書ファイルを選択し、商業登記電子証明書ファイルのパスワードを入力します。
電子署名が完了すると以下のメッセージが表示されます。
これで電子署名のステップは完了です。
スキャン書類の添付
もし使用したい帳票がe-Taxで対応前の場合は、前述のように印刷した書類をスキャンすることで申告書類と一緒に送付することが出来ます。まず、国税庁のサイトから添付したい別表をダウンロード・印刷し、記入した上でスキャナーでスキャンし、PDFとしてPCに保存しておきます。
手順は、申告書の作成と同じように上部メニューの「作成」->「申告・申告書等」->「新規作成」を選択し、作成する手続きの種類を「申告」、税目を「法人税・地方法人税」、「年度」を申告書と同じ事業年度を選択します。
次に作成する帳票の選択で、「イメージ添付書類(法人税申告)」の「添付書類送付書」を選択します。
申告・申請等の名前を入力します。今回の例では別表11の1をスキャンして送るため「令和3年度確定申告別表十一の一」とし、次の画面で申告書本体と同様に事業年度などの基本情報を入力します。
「帳票編集」を押して「添付書類送付書」を編集します。「手続名」には「令和3年度確定申告における別表十一の一[一の二]」などど入力します。
同じ画面で「添付書類(PDF)の組み込み」ボタンを押し、先ほどスキャンした帳票を選択し、名称を「別表十一の一[一の二]」とします。
正しい書類が添付されているかどうかを「添付書類(PDF)の表示」ボタンで確認したら、「作成完了」ボタンを押します。
添付書類についても、申告本体と同様、「署名」メニューから電子署名を付与します。手順は上記で説明した申告書本体の署名と同様です。
これで添付書類の準備は完了となります。
申告書送信
左メニューの「送信可能一覧へ」から「送信」を選ぶと、署名済みの申告一覧が表示されます。
上部の「送信可能申告・申請等一覧」には作成した確定申告本体が、下部の「単独送信不可申告・申請等一覧」には、スキャンして添付したイメージデータが表示されているはずです。
添付書類は単独では送信出来ませんので、「紐付け」ボタンを押して申告書本体に紐づけます。
添付書類の紐付けが完了したら、申告書本体を選択して「送信」ボタンをクリックし、利用者識別番号で受付システムにログインして送信します。
すると、送信結果の即時通知の結果が画面に表示されますので、エラーがないことを確認します。
しばらくすると、画面左メニューのメッセージボックスに確定申告本体、添付書類の受付結果と共に、税金の納付情報が届きます。
これで確定申告自体は完了しますので、黒字決算の場合は次の納付のステップにて税金を納税します。
税金納付
申告を送付後にメッセージボックスに作成された「納付情報登録依頼」を開き、納税情報を確認します。
ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付、コンビニ納付(QRコード)の中から選べますので、該当する手続きのボタンを押し、遷移先の画面での案内にしたがって納付を完了します。なお、クレジットカード納付の場合は所定の手数料が税額とは別途発生します。
これで法人税・地方法人税の確定申告・納税は完了となります。
e-Taxをうまく活用すればリモートワークでの申告・納税作業が可能になりますし、ペーパーレスにもつながるので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。