ソーシャルレンディングの会計

By 林耕平
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ソーシャルレンディングという、お金を借りたい企業とお金を貸して利益を得たい投資家をインターネットでマッチングする金融サービスがあります。
私も以前このサービスを利用して投資をしたことがありますが、その経験を踏まえ、個人投資家がこの仕組みを使って投資を行った場合に複式簿記でどのように管理すれば良いのかを紹介します。
なお、この記事で紹介する方法は融資型ソーシャルレンディング向けであり、株式型ではありませんのでご注意ください。
また、あくまで個人が自身の家計簿を複式簿記で管理する際の方法ですので、法人口座で運用されている場合は税理士のアドバイスに従って下さい。

勘定科目の設定

まず、バランスシートの資産項目として、ソーシャルレンディングの勘定科目を作ります。この例では一社のみのサービスを使っていると仮定しますが、もし複数の会社で運用しているようでしたらさらにその下層にそれぞれのサービスの勘定科目を作成します。
次に、それぞれのサービスごとに待機資金という勘定科目と貸出元本という勘定科目を作成します。待機資金は証券口座での未投資残高と同じイメージですが、ソーシャルレンディングサービスに置いてあるお金で、まだ投資していない金額の管理に使います。一方、貸出元本はその名の通り、案件に投資中のお金の管理に使います。

複式簿記でのソーシャルレンディング用の勘定科目

また、もし会計ソフト上の初期設定で勘定科目がないようでしたら、利払いを記録するための収益科目として「利子」、デフォルト損失を記録するための費用科目として「貸倒金」を設定します。

投資開始時

待機資金に置いてあるお金を案件に投資する際は、以下のような仕訳になります。
一つの資産科目から別の資産科目への移動ですので、自身のBS上の資産額に変化はありません。但し、よりリスク性が高く、流動性の低い勘定科目へ移動したということは意識する必要があります。

勘定科目 借方 貸方
貸付中(資産科目) 10,000
待機資金(資産科目) 10,000

運用中に利払いがあった場合

ソーシャルレンディングの投資案件には、運用期間中に定期的に利払いがあるものと、運用期間中は利払いはなく元本返済と一緒に一括で利払いがされるものの2種類があります。前者の場合、利払いがあった場合の仕訳は以下のようになります。

例:投資先のファンドより税引き後398円(税引き前500円)の利払いがあった。

勘定科目 借方 貸方
待機資金(資産科目) 398
利子(収益科目) 398

なお、分配金発生の際は復興特別所得税も含まれた所得税が源泉徴収されます。上記のように簡易的に税引き後の金額で仕訳しても良いですが、税金も含めたることで、確定申告の際に運用会社から発行される源泉徴収票の金額に間違いがないかをチェック出来るのと、投資に税金コストがどのくらいかかっているかを確認することが出来ます。

勘定科目 借方 貸方
待機資金(資産科目) 398
所得税(費用科目) 102
利子(収益科目) 500

なお、運用会社に源泉徴収される一時的な税額は20.42%ですが、ソーシャルレンディングの収益は総合課税となりますので、確定申告によって最終的な税率が決定されます。収入が高い方は20.42%よりも高くなる可能性がありますし、収入が低い方はそれよりも低い税額に抑えられる可能性があります。

ローン元本返済時

元本と最後の利払いが一緒に振り込まれるため、以下のようにわける必要があります。

例:元本10,000円と最後の利払い金500円の合計10,500円が振り込まれた。

勘定科目 借方 貸方
待機資金(資産科目) 10,500
利子(収益科目) 500
貸出中(資産科目) 10,000

貸出中の元本が無事に回収出来たので、貸出中の金額が減少し、待機資金科目に戻ることになります。また、あわせて利払い金の収益を認識し、元本返済額と利払い金の合計を待機資金科目の金額増加として記帳します。

貸倒れ時(デフォルト)

ソーシャルレンディングは銀行預金とは違いリスク性商品ですので、当然ながら融資先の事業がうまくいかなかった場合は返済が滞ったり、元本が全額回収出来ないケースもあります。

例:貸出元本10,000円を投資したが、融資先倒産にて8,000円しか返済されなかった。

勘定科目 借方 貸方
待機資金(資産科目) 8,000
貸倒金(費用科目) 2,000
貸出中(資産科目) 10,000

上記のように、貸出中だった元本の総額を貸出中科目から減少させ、内訳として返済額と貸倒金に分けて記帳することで貸借バランスが合い、損益も正確に把握することが出来るようになります。




このように、複式簿記を使ってソーシャルレンディング投資を管理することで、投資損益や、ソーシャルレンディングへのリスク性資産が自身の総資産の中でどのくらいの比率を占めるのかを確認出来るようになるというメリットがありますので、ぜひ試してみて下さい。